「最近タイの地獄寺ツアーっていうのに参加したんだけどさ」
「うん。どうだった?」
「まあまあ楽しかったよ。地獄寺って自分で行くと結構大変だからツアーはありがたかった。普段は絶対に知り合えない人たちとも出会えたしね」
「そう。よかった」
「でもさ、地獄寺の地獄を見てて思ったんだけど、あそこで罰を受けている人たちってみんな一応死んでるんでしょ?」
「…そりゃあまあ地獄にいるわけだから死んでるはずだ。地獄っていうのは現世で罪を犯した人が死んだ後に罰を受けるところだからね。死んでなきゃ来れないさ」
「そんなことはわかってつもりだよ。でもさ、死んでるって言っても普通に身体はあるでしょ?」
「…まあそれはそうだろう。身体がなかったらそもそも罰なんて受けれるわけない」
「しかも身体だけじゃなくて現世の記憶だってそのままだろ?だって現世で悪いことをして、そのことを忘れているのに罰を受けてたらただの虐待だからね。「俺なんで地獄で罰を受けてるんだろ?」じゃ困っちゃう」
「…確かにそれもその通りだ。本人が自分の罪を忘れていたらそもそも罰になんてならない」
「じゃあさ、ああいう人たちって一度は死んだって言っても身体も記憶も死んだ前とそっくりそのまま同じってことにならない?」
「…確かに」
「じゃあ死んでないじゃん」
「…でも現世にはもういないんだからやはり死んでいるのだろう」
「じゃあつまり死ぬっていうのはこの世からあの世に行っちゃうことをいうわけ?」
「…まあそういうことになるな」
「でもそれじゃあ人は地獄で「生きている」ことになるよね」
「…..そうとも言える」
「一体、人はいつ本当に死ぬんだろうね」
「…….さあ」
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